父親が血液でわかる、出生前鑑定とは〜父親は誰?〜

最近ニュース(2018/7/30日本経済新聞朝刊「パパは誰?出生前に鑑定 8~10週目妊婦の血液検査 倫理か女性の権利か両論」)でも話題になった出生前鑑定。妊娠したけど胎児のパパは誰?という悩める女性や妻の浮気を疑う男性の需要があるそう。

そんな出生前鑑定の概要、検査利用方法・料金、サービス提供会社、医療倫理の問題点などについて本ページでは説明したいと思います。

出生前鑑定とは

  • 母体である母親の血液を調べることで、子供がおなかの中にいる時期に父親を確認する検査のことです。多くのサービスでは「出生前DNA親子鑑定」という表記となっています。
  • これまでは、出生前に親子鑑定をするためには流産のリスクがある羊水採取が必要でしたが、近年の遺伝子解析技術の発展により、羊水ではなく血液で簡単に検査できるようになりました。
  • 母親の血液には胎児のDNAが流れており、その遺伝子配列を解析し”父親のサンプル”と照合することで親子関係を確認できます。(母体の血液中にながれる胎児のDNAを確認する検査は出生前鑑定のほか、新型出生前診断(NIPT)があります。こちらはダウン症などを確認することを目的として行われます。)

<出生前鑑定を受ける主な理由(例)>

・妻自身が父親を特定するため

・夫や家族(夫両親など)が妻の浮気を疑うため

検査方法・料金

  • 検査ができる期間:9週頃~
  • 検査をする対象:母親の血液(採血が必要)、父親の血液・唾液・たばこの吸い殻・髪の毛など
  • 結果が出るまでの期間:10~15日
  • 年齢制限:なし
  • 料金:15万円~20万円程度。裁判所等の公的機関提出用書類作成、父親1名分追加といったオプションを提供するサービスもあります。
  • 信頼性:検査結果は精度99.9%のため、ほぼ確実な結果です。

分析は基本的に海外の検査機関で行われるようです。



サービス提供会社

どのような会社がサービスを提供しているのか気になるところ。遺伝子情報を扱うのに適した会社なのか・・・。10社程度で検査が受けられるようです。そのうち、いくつかサービス内容と運営会社の情報を調べてみました。

ローカス

http://www.rocus.co.jp/parentagetesting/prenatal2.htm

運営会社:株式会社ローカス(創立2004年、資本金1000万円)

代表者は氏

一応、

中絶を目的とした場合や検査終了日を指定(例:「○月○日までに欲しい」、「1週間以内に結果を連絡して欲しい」)されるお申し込みは受付できません。

と記載しているので、推奨はしないというスタンスのようです。(もちろん検査依頼人が隠して検査はできますが・・・)

SeeDNA

運営会社:SeeDNA法医学研究所(2015年~)

代表者は筑波大学生体制御・分子情報医学の博士課程を出ている金起範氏。

こちらも、WEBサイトでは。

弊社の出生前血液DNA鑑定は産み分けを目的とする検査ではございません。

としています。

DNA JAPAN

http://dna.jpn.com/page20.html

運営会社:DNA JAPAN株式会社

代表者の櫻井俊彦氏はDNA鑑定に関する書籍も出しており、もともと法科学鑑定研究所というところにいた人のようです。

(WEBサイトは最安値!ポッキリ!といった表現があり、ちょっとアレ・・・)

PTC研究所

https://www.ptclabs.jp/mblood

運営会社:パタニティテスティングコーポレーションジャパン(2006年~)

もともとは米国の会社。代表者はWein Steven Scott氏。沖縄県浦添市にある会社のようですが、全国から鑑定依頼を受けているとのこと。

医療倫理の問題点

前述のとおり、中絶可能な時期に親子関係が可能なため、出生前鑑定が安易な中絶を助長してしまう、というのが問題点です。以前は羊水の検査でハードルが高かったのですが、血液検査になることで検査へのハードルが低くなった点も指摘されています。中絶を日本産婦人科学会では、以下のように指針を示しています。

9)  法的措置の場合を除き,出生前親子鑑定など医療目的ではない遺伝子解析・検査を行ってはならない.

出典:日本産婦人科学会「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」

つまり、日本産婦人科学会としては、裁判等で法的に必要な場合はOKですが、それ以外の場合は禁止しています。ただ、こちらは日本産婦人科学会の指針なので、拘束力はなく、また産婦人科医に向けたものなので、産婦人科医が関わっていなければ対象外となります。

厚生労働省の研究(厚労科研)でも出生前鑑定の調査が行われており、次のようなコメントを残しています。

鑑定技術が生命の選択に関わる領域に進出し、規制を受けないまま事業を展開している。

出典:2018年1月21日産経ニュース

サービス提供会社に対する規制も不十分であるため、本来遺伝子検査で必要とされている同意(出生前鑑定の場合は父親の同意)がなくてもサービスが受けられるようになってしまっています。

遺伝子検査サービスについては、経済産業省も「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」を出していますが、こちらもあくまでガイドラインで、罰則等はないので守るかどうかはサービス提供会社の判断となります。


新型出生前診断(NIPT)と同様に、今後も議論が続きそうですね。このようなサービスのニーズがあるのは理解できますが、日本の人工中絶件数は約17万件。女性が子供を持つことに対して親権に向き合い、不必要な中絶が増えないことを願います。

補足:本ページは「出生前鑑定」のサービス利用を促すものではなく、情報提供を目的としています。